キャリア
公開日:2025/09/03 最終更新日:2026/01/24

「シニアエンジニアはまだまだ働ける」IT業界歴40年のベテランが語る、企業が気付いていないシニア人材の価値とは

「シニアエンジニアはまだまだ働ける」IT業界歴40年のベテランが語る、企業が気付いていないシニア人材の価値とは

40年以上IT業界で活躍し続ける大西俊治さん(64歳)。日立製作所からスタートし、数々の企業で実績を重ねてきた。定年という区切りに疑問を抱き、「まだまだ働きたい」と語る大西氏。そのキャリア哲学とシニア人材の企業における価値について聞いた。

—まず、65歳でも「働き続けたい」と思われる理由を教えてください。

正直なところ、意識にしても体力にしても何も変わらないんですよ。5、6年前と比べても変化を感じませんし、ずっと仕事を続けてきた中で、なぜ普通に働き続けることができないんだろうという疑問を抱いています。意識も変わらないし、やりたいという意欲もある。だから、ただ「働き続けたい」と思っているんです。

働くということは、健康面でも、社会との繋がりの面でも、そしてもちろん経済的な面でも意味があることだと考えています。それが65歳になったからといって突然終わるというのは、どうにも理解できない。例えばスポーツ選手なら、人によって引退の時期は違うし、求められる限りはプレーできる。ビジネスパーソンは、なぜ65歳で区切りをつけられるのか、そこに大きな疑問を感じているんです。

—そうした想いを持つきっかけとなった、40年のキャリアについて聞かせてください。まず、IT業界に入られた当時の状況から教えてください。

日立製作所のエンジニアとしてキャリアをスタートしました。入社当時はまだITという分野がそれほど注目されていない時代でしたね。いわゆるメインフレームの時代で、今とは状況が全く違っていたんです。SEやプログラマーという職種はもちろん必要でしたが、現在のようにお客様との関係性や役割が明確に確立されているわけではありませんでした。

私は大学では文系専攻でした。SEはお客様とのコミュニケーションが重要な職種。当時の日立は、理系よりも文系の方が適していると考えていたようで、SEには文系出身者が多く採用されていました。技術については後から勉強すれば追いつけるという発想だったと思います。コミュニケーション能力を重視し、技術的な部分は入社後の教育でカバーできるという時代背景がありました。私としても情報系の専攻だったこともあり、希望する職種に付けたわけです。

ーその後、どのような経緯で営業職に転身されたのでしょうか。

20年ほど経った頃に、大阪に本社を置く会社の社長さんと知り合う機会がありました。その方から、東京での事業展開を本格化したいので、うちに来ないかとお誘いをいただいたんです。私自身も、日立での仕事には満足していたものの、経営的な視点を学んでみたいという思いがありました。

そこで、事業統括のポジションで転職をしました。当時は終身雇用が当たり前の時代。不安はありませんでしたが、今振り返ると、なかなかチャレンジングな決断をしていますね(笑)小さな会社でしたからマネジメントだけなく、プレイングマネージャーとして実際の営業活動もすることに。結果として、自然と営業の道に進むことになったんです。

—40年のキャリアを通じて、IT業界はどのように変化してきたとお感じですか。

技術の進歩は著しい。IT業界は変化のスピードが非常に速いのですよね。ただ、営業という立場から見ると、根本的な部分はそれほど大きく変わっていないと感じています。

AIの発達でエンジニアの仕事が減少するのではという話もよく耳にしますが、求人案件も減っていない。ITエンジニアの不足は明らかですし、業界の本質的な構造はあまり変わっていないような気がします。

—シニアエンジニアならではの強みや価値について、どのようにお考えですか。

過去の知見や経験に裏打ちされた安心感ですね。例えばクラウド案件を扱う場合。

若手のクラウドエンジニアは確かにAWSやAzureといったクラウドサービスを使いこなしています。しかし、サーバーを自社施設内に設置し、一から構築・管理・運用した経験を持つ人は少ないのが現状です。

オンプレミス時代を経験したベテランエンジニアは、サーバーやネットワークの根本的な仕組みを深く理解した上でクラウドを活用できます。「このボタンを押せばメモリが増える」という表面的な知識ではなく、なぜそれが必要なのか、どういう影響があるのかを理解している。この技術的な裏付けこそが、ベテランのSEやPMに対する安心感であり強みだと思います。

開発現場では新しい技術への対応力や攻めの姿勢が重視されがちですが、ベテランがチームに一人いることで得られる価値は計り知れません。特にトラブルが発生した際の冷静な判断力や対処能力は、貴重な資産と言えるくらいです。

—一方で、企業側が年齢を理由に採用を躊躇するケースも多いと思います。この現状についてはどう感じますか。

もったいない状況ですよね。人材不足を嘆きながら、大手のSI企業でさえ思うように人材を確保できていないはずです。

『若手を採用したい』と言い続け、シニア世代に目を向けないことで、活用できる人材を見逃しているように思います。年齢だけで線引きをしてしまうから、企業側が勝手に人材を不足させている。採用するかの判断が人によるのは、若手だって変わらない。年齢ではなく技術力や経験など中身を見るべきだと感じています。

実は、シニア世代の多くが同じような悩みを抱えていると思います。働きたい意欲があっても、既存の転職サイトや人材紹介サービスは、どうしても年齢的な制約があります。

若手であれば選択肢がたくさんありますが、年配者は行き場がない。働きたくても働く場所がないという状況を、何とか改善したいと強く思っています。

—企業がシニア人材を活用する際に、注意すべき点はありますか。

特別扱いをする必要はないですね。特別な配慮をされると、かえって年齢を気にしているのかなと感じてしまいます。技術を評価して採用したのであれば、他のメンバーと同じように接してもらった方が良いです。

また、シニア人材を受け入れる際には、チーム構成や役割分担を明確にしていただくとスムーズだと感じます。例えば、プロジェクトのトップがどういう経歴のどんなタイプの人かや、チームの平均年齢などの情報があれば心構えがしやすいです。これはシニア・若手に関わらず、活躍できる環境を整えるために企業がするべきことと言えるかもしれません。

チームに馴染めるかなど、コミュニケーション力の問題も、若手と変わらず、正直人による部分が大半です。ただ過去の経験から、トラブルを一人で抱え込まずに対処できたり、若手の悩みやつまづきに気付けるのは、シニアならではのメリットだと感じますね。

—最後に、今後のキャリアや働き方について、どのような展望をお持ちですか。

長年SES営業に携わってきた経験を活かして、これからも人材に関わる仕事を続けていきたいと考えています。

また、シニア世代が本当に働ける環境を作りたいという想いがあります。現状は年齢を理由に門前払いされることもあり、理想と現実にはギャップがあります。

私と同じような年代の方々は、きっと同じような悩みを抱えているはずです。そうした方々が活躍できる場を提供することは、私自身の切実な願いでもあり、また、レガシーフォースに共感している点でもありますね。

経験と技術を持ったシニア世代が、年齢に関係なく活躍できる社会。それが実現すれば、人手不足の解決にもつながるし、個人の生きがいにもなると信じています。