40年以上にわたりCOBOLと共にキャリアを積んできた飯島裕一さん。NECでの開発経験を経て、定年後も教育やツール開発に取り組み続けています。シニアエンジニアとして現役を続けるモチベーションや、これからの社会での役割について伺いました。
— これまでのご経歴と現在の活動について教えてください
私は1986年にNECへ入社し、メインフレーム系の言語開発部門に配属されました。大学時代は当時としては最新であったC言語などを学んでいましたが、入社後に携わったのがCOBOLのコンパイラ開発でした。
COBOLは当時から「古い言語」と言われていましたが、社会インフラを支える多くのシステムに利用されており、その重要性を強く感じました。その後はメインフレームからオープン系へのマイグレーション、2000年問題対応など、多くの節目に携わり、長年COBOLの開発と普及に関わってきました。
現在は定年退職を経て独立し、プログラミング教育やCOBOL資産の見える化などの支援活動を行っています。特に若い人が学びやすいCOBOLプログラミング環境を整えることや、長く使われてきたCOBOL資産を整理・活用できる仕組みづくりに力を入れて活動しています。
— なぜCOBOLに携わることになったのですか? 当時の背景や印象を教えてください

配属先がたまたまCOBOLの開発部門だったのがきっかけです。正直なところ、当時からすでに「古い言語」というイメージがあり、最初は戸惑いもありました。しかし実際に触れてみると、駅のオンライン予約システムなど身近な社会インフラを支えていることを知り、大きな可能性を感じました。
パソコンが普及する前の時代、企業の基幹システムはほとんどがメインフレームとCOBOLで動いており、「これが社会を支えているんだ」と実感したのをよく覚えています。難解な言語と思われがちですが、実際には「やりたいことを素直に書く」シンプルさがあり、業務システム開発者にとって理解しやすいものでした。その特性に魅力を感じ、結果的に40年以上にわたって関わり続けるキャリアとなりました。
— 長年COBOLと向き合う中で感じた強みや役割とは何でしょうか?
COBOL自体はシンプルで分かりやすい言語です。
難しさがあるとすれば、OSやミドルウェア、データベースとのインターフェース部分で、各メーカーごとに仕様が異なるため習熟が必要になる点でしょう。しかし逆に言えば、その知識を身につければシステム全体の構造を理解できる力が養われます。COBOLは高精度の計算処理、帳票、バッチ処理など、企業活動に欠かせないビジネス分野に強みを発揮してきました。
また、長く使われてきたことで改定や法改正対応のためプログラムのコードが複雑になってしまっている資産も多いのですが、それは他の言語でも同じ課題です。むしろ長期間にわたり社会を支え続けてきたこと自体が価値だと感じています。ビジネスの業務システムの基本構造を理解できるCOBOL開発経験は、今でも十分に強みとして活かせると考えています。
— 現在取り組んでいる活動や、AI時代への展望について教えてください
現在は、教育や学習環境づくりに加えて、COBOLに関わる技術支援やツール開発にも取り組んでいます。
長年積み重なってきた企業内の業務システムを、いかに効率的に維持し、次の世代へ引き継ぐかという点は多くの現場で共通の課題です。私はそうした課題に対して、現場で役立つ仕組みや支援方法を提供できるよう試行を続けています。
一方で、AIの進化によってプログラミングの世界は急速に変化しています。コード生成や変換が自動化される可能性が広がる一方で、現実にはまだ人の経験や判断が欠かせません。特にレガシー領域では、積み重なった知識や文脈を理解した上でなければ対応できない部分が多く残されています。
今後は、AIが得意とする部分と、人が担うべき部分を組み合わせて活用することが重要です。私はその橋渡し役として、自らの知識を活かしながら、シニア世代だからこそできる支援を続けていきたいと考えています。
— シニアエンジニアとして働き続ける理由や、社会との関わり方についてどうお考えですか?
私にとって「仕事をやめる」という発想がなかったのが正直なところです。嫌いな仕事なら辞めていたかもしれませんが、好きで続けられているから今も現役でいられます。
また、同じ志を持つ仲間と交流できる場があるのも大きいです。コンソーシアムなどの活動に参加し、普及や教育に携わることで刺激を受けています。シニアだからこそ求められる役割もあると思います。例えば、長年の経験から業界知識や業務理解が深く、プロジェクトに安定感をもたらせますし、若手にノウハウを伝えることも大切です。
企業側にとっても、シニア人材は短期的に転職するリスクが低く、安心して任せられる存在です。体力やスピードは若手に劣る部分があるかもしれませんが、それを補って余りある経験値と安定感が、シニアエンジニアの大きな価値だと考えています。
— 同世代のベテラン・シニアエンジニアや後輩世代に伝えたいメッセージはありますか?
人生100年時代と言われますが、60歳はまだ折り返し地点にすぎません。シニアだからと遠慮する必要はなく、これまで積み重ねてきた経験を生かして挑戦を続けてほしいと思います。長いキャリアを通じて必ず自分ならではの強みがあるはずです。それを社会に還元する場は必ずありますし、求められている実感もあります。
私自身も「COBOLは古い、難しい」と思われがちなイメージを変え、COBOLを学びやすい環境を提供することで、若手や未経験者にも挑戦のきっかけを与えたいと考えています。これからも、経験を生かして新しい技術や分野に関わることは十分可能です。
ぜひ同世代の皆さんも、自分の知識や経験を惜しみなく活かし、社会に貢献していっていただければと思います。
