キャリア
公開日:2025/10/17 最終更新日:2026/01/24

HRパッケージの“枠”を超えて提案する力 と、シニアエンジニアがもたらす「業務理解」による価値

HRパッケージの“枠”を超えて提案する力 と、シニアエンジニアがもたらす「業務理解」による価値

人事・給与パッケージ導入の現場で、要件定義から運用定着まで長く伴走してきた久保已樹男さん。銀行系SIerで「3か月で1社」を約7年続け、20社超の制度と運用を横断的に学んだ経験を土台に、製品名ではなく“業務理解×説明力”で価値を発揮してきました。パッケージは手段、目的は“正しく続く給与計算”。その実践知と進め方を、シニア世代のキャリア視点で語っていただきました。

これまでのご経歴と、HRパッケージに特化した転機を教えてください

偶然だったのですが、起業して従業員の給与計算を私が行っていた経緯があり、それを見込んで給与計算関係のパッケージの導入チームに参画する事になりました。そこから人事・給与の導入現場に移り、最初に強く感じたのは、機能の暗記よりも規程と計算根拠を自分の言葉で説明できるかという点です。

お客様と同じ語彙で話し、なぜその設定に至るのかを腹落ちするまで伝える。以降は要件定義から運用定着まで、目的を“正しく回り続ける給与計算”に置く進め方を徹底してきました。パッケージはあくまで手段。制度・就業規則・改定履歴・境界値を整理し設計に織り込む姿勢が、HR領域に軸足を移す転機になりました。

17年前に出会った業務が私の一生のライフワークになるとは、その時には夢にも思いませんでした。これは以前行っていた基盤構築にも通じています。基盤構築は“プログラムを動かす為のプラットフォーム”という観点、また、“給与計算業務は“従業員と企業の信頼関係を築く重要な基盤”という観点から、どちらも裏方としての重要な役割を担っています。今、心から給与計算業務に携われている事に幸せを感じています。 

人事・給与に精通する決定打になった“最も印象的なプロジェクト”とはどんなプロジェクトでしょうか?

最も印象に残るのは銀行系SIerでの導入です。

SE一人で一社を約3か月で仕上げるサイクルをおよそ7年続け、累計20社超を担当しました。毎社で規程の語彙や境界条件、例外処理の癖が異なるため、短期間で読み解き、計算ロジックに落とし、現行照合で詰め切る反復が続きます。限られた時間で“どこを先に決めれば全体が進むか”を見極め、要件→設定→検証の優先順位を組み替える習慣が身につきました。

この繰り返しが、製品の操作以前に業務の骨格を掴む力になり、今の“表層ではなく本質に届く提案”の基礎になっています。結果として、製品が変わっても迷わず最短経路を描けるようになりました。

「パッケージよ り業務理解」が大事—その意味を教えてください

人事・給与の目的は、正しい計算が運用で途切れず続くことに尽きます。だからこそ、法令や社内規程、改定履歴や境界値、例外の扱いを構造化し、設計へ織り込む順番を大切にしています。仕様を覚えるより、根拠を説明できることが重要です。「この金額はこう導かれます」とお客様と同じ言葉で語れれば、要件検討も試験も迷いが減り、監査や引き継ぎでも強さを発揮します。

私は“業務理解七割・パッケージ三割”の感覚で進めますが、パッケージの習熟はその七割を支えるためのもの。業務理解が先にあるほど、どの製品でも最短距離で安定運用へ到達できると考えています。

お客様の要望を“うのみにしない”進め方とは?

最初に前提をほどくところから始めます。現行帳票やフローをそのまま移すのではなく、「目的は何か」「監査や締めの制約は何か」「運用の負荷はどこか」を一緒に並べ直し、要件を再定義します。そうすると、機能を追加するより“手順を変える”、“入力責任を見直す”、“制度側を少し整える”ほうが効く場面が見えてきます。

打ち手はシンプルでも、納得できる理由が伴えば現場は動きます。私は議事と差分と根拠を小さく可視化し、小さく試してすぐ戻すリズムを作るようにしています。

道具の前に考え方を整える——この順番が、チーム全体の前進を早めてくれます。

いまの仕事への関わり方と、現場から「またお願いしたい」と言われるコツについて教えてください

上流の要件定義から、パラメータ設計・試験支援・運用設計まで一気通貫で関与します。

オンライン中心の体制でも、論点・差分・根拠を簡潔に共有し、意思決定のテンポを落とさないことを心がけています。現場で評価いただくのは、製品の細部の暗記より“業務を走らせる段取り”と“説明のわかりやすさ”。スモールスタートで運用を先に回し、段階的に拡張する進め方もよく採ります。

必要に応じて検証用の小さなツールを自作し、計算式とデータの突合を素早く回す工夫も続けています。結果として、合意形成の迷いが減り、「またお願いしたい」と言っていただけるのだと思います。

同世代のベテラン・シニアエンジニアに伝えたいメッセージは?

年齢ではなく、他者に負けない説明力が軸になります。規程とロジックを自分の言葉で語れれば、製品が変わってもやるべき事は変わりません。

学び直しは小さく速く、計算検証のスクリプト化やテスト観点のテンプレ化、用語集の整備など、明日から効く工夫を積み上げてください。シニアは“柔らかな物腰×厳密な根拠”で信頼を得やすい世代です。得意領域の知見を磨き続け、若手と役割を分担しながら、最上流の課題整理に名乗りを上げましょう。

業務理解でチームを前へ進める人材は、これからの現場で必ず求められます。